12.Arsenicum (アルセニカム・ヒ素)
ARSENICUM (アルセニカム・ヒ素)    <水本 晶子 訳>


想像してごらんなさい

自分の命が終ってしまうのではないかと思い
恐怖でうろたえているあなた

それは朝早くのこと
あなたは家族がまだ寝ているとも知らずに
だれか起きてくれないかと願う
まだ夜が明けきっていないのに

それは 独りでいることができないから
ひどく寒気がして ちょうど熱が出始めていたせいでしょうか
あるいは気管がゼーゼーしていたからかもしれません

あなたはお茶を少しずつ飲むのが好き

小さい時からポンポンが弱くて
腰かけるとおしっこのように出てしまう
さまざまな痛みは焼けるように熱く痛み
あなたは不安で気が休まることがない
馬が落ち着きを失いじっとしていられないように

だれかがあなたに薬をよこし
その人たちはあなたが死ぬことを望んでいる
このおそろしい不快なシラミは一体何者なの?
家の中にどろぼうがいるのかしら?
家の中には あなたを怯えさせるものなんて何もないのに
あなたはそんなことを頭の中に描いて
真面(まじ)怯えきっている

アルセニカムがあなたを助けます
くつろぎと良い眠りが得られるでしょう




アルセニカム(ヒ素)

健康への不安、落ち着かなさ、披露困憊、寒気、のどの渇き、焼けるような痛み

歴史的背景

生きものを死に至らせる猛毒。ハエ取り紙や壁紙に使われていた時代もあって、砒素中毒を引き起こしたりしていた。ナポレオンも壁紙からの影響で死んだといわれている。
獣の皮をなめす際の防腐剤としても使われている。


Materia Poeticaインデックス



アルセニカム(アルセン・アルブ   ヒ素)
砒素は昔から猛毒として知られています。現在もときどき何かしら物騒な雰囲気で新聞紙上をにぎわせることがあります。

森永ヒ素ミルク事件では沢山の赤ちゃんが亡くなったし、工場跡地での土壌への垂れ流しから砒素が井戸水に含まれていて中毒症状を起こしたり。今も昔も話題には事欠かない猛毒です。

このような猛毒をハーネマンはいち早くレメディにつくりあげましたが、主に気道や消化管の粘膜の症状にもちいられています。

ホメオパシーのことを説明される時に、毒を持って毒を制する、といういわれ方をされたりします。

なるほど、さもありなん。トリカブトといい、砒素といい、水銀といい、ハーネマンがいち早くプルービング(ホメオパシーの人体実験)したものの中には猛毒がごろごろしているのですから。

ハーネマン以前の医療には、このような猛毒が昔から使われていたのですが(もちろん薄めて使う使われ方ではあったのですが)毒には治癒的効果があったのです。

水銀は梅毒に、砒素はがんの治療にに、使われていたのですが、伝統的な医療は症状を見えなくさせる抑圧的な療法(アロパシー)にすぎません。

これがレメディになると、成分が一切含まれていませんから、毒が持っている精妙なエネルギーだけを借りてくることになります。毒は毒だからこそ、それなりのすぐれてエネルギー体であった、ということにハーネマンは気がついていたのです。

さて、この砒素のレメディのピクチャーには、ひどい不安感という項目があります。人が亡くなっていくときは死への不安でいたたまれなくなるものですが、それは魂のふるえのようなものです。

安らかに死を迎えることができるように、と、このレメディが臨終で使われることもあるようです。

似たものが似たものを癒す、という真骨頂が発揮される場面です。

ホメオパシーが医者と坊さんの二つの役割を持つ、といわれたりするのには、こうした背景があるからなのです。

レメディは魂の救済を最期にはたしてくれるのかもしれませんね。

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フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より

ヒ素(ヒそ、砒素、英名: arsenic)とは、原子番号 33 の元素。元素記号は As。第15族(窒素族)の一つ。

最も安定で金属光沢のあるため金属ヒ素とも呼ばれる「灰色ヒ素」、ニンニク臭があり透明なロウ状の柔らかい「黄色ヒ素」、黒リンと同じ構造を持つ「黒色ヒ素」の3つの同素体が存在する。灰色ヒ素は1気圧下において 615℃で昇華する。


生物に対する毒性が強いことを利用して、農薬、木材防腐に使用される。

発光ダイオードや通信用の高速トランジスタなどにも用いられている。

ヒ素化合物であるサルバルサンは、抗生物質のペニシリンが発見される以前は梅毒の治療薬であった。

中国医学や韓国医学では、硫化ヒ素である雄黄や雌黄はしばしば解毒剤、抗炎症剤として製剤に配合される。

ある種の生物にとってヒ素は必須元素である。微生物のなかには、一般的な酸素ではなく、ヒ素の酸化還元反応を利用して光合成を行っているものも存在する[1]。


人体への影響
単体ヒ素およびほとんどのヒ素化合物は、人体に非常に有害である。飲み込んだ際の急性症状は、消化管の刺激によって、吐き気、嘔吐、下痢、激しい腹痛などがみられ、場合によってショック状態から死に至る。慢性症状は、剥離性の皮膚炎や過度の色素沈着、骨髄障害、末梢性神経炎、黄疸、腎不全など。慢性ヒ素中毒による皮膚病変としては、ボーエン病が有名である。単体ヒ素及びヒ素化合物は、毒物及び劇物取締法により医薬用外毒物に指定されている。日中戦争中、旧日本軍では嘔吐性のくしゃみ剤ジフェニルシアノアルシンが多く用いられたが、これは砒素を含む毒ガスである。

ヒ素およびヒ素化合物は WHO の下部機関 IRAC より発癌性がある〔Type1〕と勧告されている。

一方でヒ素化合物は人体内にごく微量が存在しており、生存に必要な微量必須元素であると考えられている[2][3]。ただしこれは、一部の無毒の有機ヒ素化合物の形でのことである。低毒性の、あるいは生体内で無毒化される有機ヒ素化合物にはメチルアルソン酸やジメチルアルシン酸などがあり、カキ、クルマエビなどの魚介類やヒジキなどの海草類に多く含まれる。さらにエビには高度に代謝されたアルセノベタインとして高濃度存在している。人体に必要な量はごく少なく自然に摂取されると考えられ、また少量の摂取でも毒性が発現するため、サプリメントとして積極的に摂る必要はない。

亜ヒ酸を含む砒石は日本では古くから「銀の毒」、「石見銀山ねずみ捕り」などと呼ばれ殺鼠剤や暗殺などに用いられていた。

宮崎県の高千穂町の山あい土呂久では、亜ヒ酸製造が行われていた。この地区の住民に現れた慢性砒素中毒症は、公害病に認定された。症状としては、暴露後数十年して、皮膚の雨だれ様の色素沈着や白斑、手掌、足底の角化、ボーエン病、およびそれに続発する皮膚癌、呼吸器系の肺癌、泌尿器系の癌がある。発生当時は、砒素を焼く煙がV字型の谷に低く垂れ込め、河川や空気を汚染したものと考えられた。上に記した症状は、特に広範な皮膚症状は、環境による慢性砒素中毒を考えるべき重要な症状である。この症状が重要であり、長年月経過すれば、病変、皮膚、毛髪、爪などには、砒素を検出しない。

上流に天然の砒素化合物鉱床がある河川はヒ素で汚染されているため、高濃度の場合、流域の水を飲むことは服毒するに等しい自殺行為である。低濃度であっても蓄積するので、長期飲用は中毒を発症する。地熱発電の水も砒素を含むので、川に流されず、また、地下に戻される。慢性砒素中毒は、例えば井戸の汚染などに続発して、単発的に発生することもある。このような河川は中東など世界に若干存在する。砒素中毒で最も有名なのは台湾の例であり、足の黒化、皮膚癌が見られた。汚染が深刻な国バングラデシュでは、皮膚症状、呼吸器症状、内臓疾患をもつ患者が増えている。ガンで亡くなるケースも報告されている。中国奥地にもみられ、日本の皮膚科医が調査している。

1955年の森永ヒ素ミルク中毒事件では粉ミルクにヒ素が混入したことが原因で、多数の死者を出した。この場合は急性砒素中毒である。

2004年には英国食品規格庁がヒジキに無機ヒ素が多く含まれるため食用にしないよう英国民に勧告した。これに対し、日本の厚生労働省はヒジキに含まれるヒ素は極めて微量であるため、一般的な範囲では食用にしても問題はないという見解を出している[4]。

また、土壌汚染対策法において、ヒ素およびその化合物は第2種特定有害物質に定められている。


ヒ素の化合物 [編集]
アルシン (AsH3)
カコジル (CH3)2As−As(CH3)2
ヒ化ガリウム (GaAs, GaAs3)
三酸化二ヒ素 (As2O3) – 急性前骨髄球性白血病(APL)の治療薬。商品名トリセノックス。海外では骨髄異形成症候群(MDS)、多発性骨髄腫(MM)に対しても使われている。その他血液癌、固形癌に対する研究も進められている。
サルバルサン (C12H12As2N2O2) – 元々は梅毒の治療薬

歴史 [編集]
1250年にアルベルトゥス・マグヌスにより発見されたとされる。

ヒ素は無味無臭かつ、無色な毒であるため、しばしば暗殺の道具として用いられた。ルネサンス時代にはローマ教皇アレクサンデル6世(1431年 - 1503年)と息子チェーザレ・ボルジア(1475年 - 1507年)はヒ素入りのワインによって、次々と政敵を暗殺したとされる。

入手が容易である一方、体内に残留し容易に検出できることから狡猾な毒殺には用いられない。そのためヨーロッパでは「愚者の毒」という異名があった。

中国でも天然の三酸化二ヒ素が「砒霜」の名でしばしば暗殺の場に登場する。例えば、『水滸伝』で潘金蓮が武大郎を殺害するのに使用したのも「砒霜」である。