ケースを受け取る
ホメオパシーのセッションとは、クライアントの物語を偏見のない観察者として受け取ることです。 クライアントが語るたくさんの物語は、ホメオパスにとってはダイアモンドです。 ケースをきちんと受け取れれば、治療は成功したも同然になります。 ~今あなたがお係りのホメオパスはどれだけの時間をあなたのセッションにかけていますか?まさか声が聞こえる隣の部屋に別のクライアントがいるなんてことはないでしょうね・・・? ~イタリアのマッシモという当代きってのホメオパスのセッションルームは洞窟のようらしいのですが、深層意識に入っていくための舞台づくり・シチュエーションづくりも大切のようです・・・ |
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ホメオパスがセッションをするということは、ケース(症例)に向かい会うということです。その時に大切なこと、それは、症例を受け取らせてもらうという態度で始めなければならないということです。 その際には、患者さんが自分の物語、自分の話を伸びやかに話していただけるような雰囲気作りがとても大切なことになります。 狭い診療室で次に待っている方が姿を見せることは、今現在セッションに向かい合っている患者さんの気持ちを落ち着かせなくさせますから、時間的にせかしたりすることを慎まなければなりません。 かかるべき時間がちゃんとかかり、起こるべきことが起こるようにするわけです。 初診でホメオパスは、患者さんに対して気持ちをオープンにして、全く白紙の状態で相手の言う話を受け入れるようにしなければなりません。 ひたすら受け手になり、患者さんが話したり表現したりすること全てを受け取らなければなりません。自分の偏見で決めつけたり判断したりはしてはいけません。 五感全部を使い、その患者さん全体を受けとめます。 こちらから聞く内容は、何が好きかとか、食べ物はどういうものが好きか、とか、 季節はいつが好きか? とか、いろんなことを聞いて行きます。 もっと細部の情報を聞くこともあります。 患者さんの話を聞く時には言葉以外にも、あらゆる意味で患者さんを観察します。「偏見を持たない観察者」という立場であらゆる情報を患者さんから受け取っていきます。 観察者としてのホメオパスは、自分自身がクリアーでシャープでなければなりません。明晰で鋭敏な状態で患者さんを観察します。 患者さんを観察する時には、言葉だけではなく、ジェスチャ-とか、洋服の着こなしとか、肌の色つややなどということも含めた全てを観察します。 セッションの申し込みを受け付けた電話での患者さんの様子からも観察が始まっています。電話を最初に聞いた時から既に問診が始まっているのです。 つまりその人がどのような感じで話しかけてくるのか、どういうふうに言ってくるのか、そこから既に問診のプロセスが始まっているのです。 ホメオパスは「偏見なき観察者」という立場を取り続けます。患者さんが語ることを症例として克明に記録していきます。 自分の個人的な考えは一切含めないで、ひたすら客観的に、冷静に記録を取っていきます。どんな小さな情報でも全て記録していくのです。 そうした断片が重なり、なにかひとつの絵になっていく様はジグゾーパズルのようです。部分がつらなって最終的な全体像につながっていくわけです。 パズルがつながっていくみたいに、しっかりと組み合わさっていった時、そしてどんどん増えていった時、最終的に全体像、その患者さんが人生の中で今どういうふうな状態にあるのか、その人の人間関係がどのようなあり方をしているのか、それがすべて、その人の全体像を表わしているのです。 このようになっていくためには、ホメオパスは何の先入観ももたない、何の判断もしないことです。白紙の状態で患者さんの語る言葉を受け止め、また観察したこと全てをそのまま冷静に記録することだけが、この段階では重要になっていきます。 自分の予測や想像などは一切さしはさみません。 ひたすら客観的な観察者としての記録だけを残します。本人から聞き出せるどんな些細なことでも、あるいはこちらの質問に対して答えていただいたことすべてを観察し記録していきます。 こちらからの問診が詳細であればあるほど、その後の治療の効果も期待できるようにになります。それだけいい治療ができるわけです。 ひたすら話を聞きそれを記録するということに努めます。 現代医学のように、話を聞いてすぐに診断に結びつけるということではありません。患者さんの外面と内面を受け止めて記録するということです。 患者さんが悩み、苦しみを体験していて、それをホメオパスに助けを求めて来たのですが、私たちホメオパスも人生の中で悩んだり病気になり、苦しみを抱えることもあるわけだから、セッションルームでは、苦しみを体験する人間同士として出会うことになります。 このようにして受け取ったケースを記録した内容を振り返って吟味した時、その中に全く明白にレメディ-を示唆する情報があり、情報を振り返ってみただけで、この人にはこのレメディーが絶対必要であると極めて明白になる場合もあります。 そのような場合は次の段階というのは非常に短い時間で済むわけです。 またそこまでではなくても、記録をしばらくじっと振り返り見ていくことで、レメディーがすぐわかるということもありますが、そういうケースばかりではありません。 むしろ非常に時間がかかる場合が多いものです。記録したものをみた時にレメディ-をなかなか絞り込めない、明らかにできない場合があるわけです。 場合によっては最初に問診した日から何日も、或いは1週間とか更には何週間もかけて、その人において何が治療されなければならないのか、治癒される必要があるのかを明らかにするプロセスに時間をかけることが必要になってくる場合もあるのです。 つまり、ホメオパシーで扱うのは患者さんの症状ではないということです。 今その人が、症状という形で表現している、その人自体の状態、その人そのものを扱うということなのです。 Diseaseという言葉は dis-ease 、心安らかに、幸せに生きていられないことを指しますが、それが何なのか? dis-easeであってeaseでなくなった部分、そこをホメオパシーは見、扱うということです。 受容する段階、そしてそれを吟味し、それを見直し、内容をしっかり考えてみる段階、それが終わったら、積極的にこちらから働きかける段階になります。 それは、患者さんにどのようなレメディーを投与すると上手くいくのかということです。レメディーはエネルギーですから、どのようなエネルギーをその人に与えれば、その先うまく進んでいけるのか、という積極的な段階に入ります。 多くのレメディーの中から患者さんが示している状態、現在のその人の全体像とちょうどマッチしたレメディーがあるのか、患者さんとレメディーの症状像と同じエネルギーがあるかということをみていって、その中から突き止めるわけです。 「レメディー」は普通には「薬剤」かもしれませんが、いわゆる一般的に言う薬剤という役割をするわけではありません。 レメディーの中にあるのはエネルギーだけです。微細なエネルギーですが、それが患者さんのエネルギーと相互作用があった時には、反応が起こります。 その反応は患者さんの中に変化を起こさせるための一つのきっかけになるわけです。 その変化というのは本人の健康な状態を取り戻す方向に向かっていくこと。そしてDis-ease、easeでなくなったところから、at easeな方向へ向かっていく、そういうように働きかけるものとしてレメディーがあるわけです。 レメディー自体は3000種を超えていて、それがマテリア・メディカに網羅されていますが、今この時点でも毎日のように研究が進められているわけで、新しいレメディーを開発するために、プルーヴィングが毎日世界中で続けられていますから、新しいレメディーがどんどん増えていくという状態にあるわけです。 しかし3000種を超えていても、たくさんの人間がさまざまな段階で陥っている状態というものとピッタリ合うものが、それらを全部カバーするだけの数が充分あるかということに関して言えば、人間がみな独自でそれぞれが違うわけですから、必ずしも絶対探せるとは言えないかもしれません。しかし、かなり高い確率で非常に近いもの、非常に似ているもの、つまりその一人一人の患者さんの状態とレメディーの症状像とがマッチする、非常に酷似している、そういうものを探せると言えると思います。 次の段階では、似たレメディーを次第に絞っていきます。つまり3、4種類のレメディー、ここが非常にこれに似ているというのを選んでくるわけですね。患者さんにとって、また患者さんの代わりにそういうレメディーを選んでいるホメオパスにとっても、非常に重要な地点にきているわけです。 ここでの重大な選択は、どのレメディーにするのか、ポーテンシー、強さ、深さをどうするか、働きかけが強いもの、あるいは強くないものを選ぶかということになっていきます。 ポーテンシーを決める時には、患者さんの身体面の今の状態、強さ、体力といったもの、あるいは精神面、心理面、感情面の状態といったものをみながら、どの位の強さ、深さのポーテンシーをその人に与えるのが一番的確なのか、ということをホメオパスは判断しなければならなくなります。 レメディーには、原料として動物、鉱物、植物があります。このレメディーをここの段階で絞って、患者さんにお渡し致します。 その時にも、レメディには錠剤のもの、あるいは液体のものがあります。投与量も考えます。一回に一錠だけなのか、複数なのか、あるいはそれを何日間飲んでもらうのか、一回だけなのか、或いはそれを何日か間隔をおいて続けて飲んでもらうのか、個々にみんな違います。 その後、レメディーが実際にその人の中に於て効果を現わすための時間をあげなければなりません。 それはレメディーが効くための時間でもあるし、患者さんに必要な時間でもある。患者さんがそのレメディーに反応して、変化が充分に起こってくる、そのための余裕を持った時間を与える必要がありますから、その後それがその人にどのような変化を起こしたか、本人からも報告してもらうわけです。 急性の場合、数時間後や翌日には、今言ったようなプロセスがはっきり終わってしまうものもあれば、一週間とか、何か月もかかる場合があります。あるレメディーが処方されて、本人にとってかかるべき時間がかかって変化が終わるまで、何か月もかかる場合があるのです。 患者さんが最初に問診に見えた時には、一切せかさない、いつまでにその話を語り終えなければいけないとか、そういう事がないようにして話してもらうのですが、ホメオパシーにおいては充分必要な時間をとって物事を進めるということが非常に重要な要素です。 よって、問診の内容を振り返り、吟味する時、分析する時にもやはり充分な時間を取るわけです。 非常に短くて済む場合もあるけれども、数日とか1週間とかかけて、なるべく正確な、その人に必要なものをはっきり絞りこみながらレメディーを見つけていきます。ホメオパスも充分な時間をかけてそれをやる必要があります。 物事が自然に、期が熟し、はっきりわかってくる、そのための時間をしっかり取る、ということが、ホメオパシーにおいては基本です。 Adam Martanda (Soluna Scool of Homeopathy) |